一般社団法人紫波町観光交流協会

大巻館（河村館）跡　おおまきだて(かわむらだて)あと

《町指定文化財》

南朝側として斯波氏（北朝）と戦った河村一族の拠点城郭。

　紫波南大橋を東に向かって渡ると正面に大巻館のある、なだらかな丘が見えてくる。高水寺城の南東３ｋｍ、北上川左岸の丘陵「館山」にあり、北西方向に犬吠森館、高水寺城、西方の河岸低地に星山館、北条館が一望される。南北二方は沢に限られ、東西２５０ｍ、南北４００ｍ、比高５８ｍである。ほぼ南北に連なる３郭と西側の郭によって構成される。いずれも空堀と土塁によって画される。主郭とみられる北側項部の郭は、東西３０ｍ、南北７０ｍでありさらに腰郭が巡る。中央部から南寄りに塚一基が確認される。南部は段状をなし、中ほどに空堀が残存する。また、東部には井戸を伴う屋敷跡が推測される。遺存状況から改修の可能性が高いが、大正年間に公園化されたため明確でない。

　城主河村氏は、秀清が文治５年（１１８９）源頼朝の奥州征圧軍に従い、阿津賀志山の戦いなどの軍功によって紫波郡河東の数村・玉山・川口・沼宮内や宮城県内などに領地を給された。大巻には秀清の５代の孫秀興が分家してこれを本拠にしたとされる。南北朝時代には南部・滴石氏とともに南朝方として北上河東の大部分を所領とした。本城は紫波郡の河村領内中央に位置し、西方は北上川に臨み、東方は黒石山を負い、南北には深谷があり、要害堅固の地である。また北には犬吠森、長岡、大萱生大、栃内、江柄の諸城舘があり、南方には機織舘、牛ノ頭舘、佐比内館があり、これらを両翼として北西南の三方に臨み、その団結に依り、河西方面からの斯波氏の攻略に対することが出来きたと思われる。南北朝の合一がなったのちの応永三年（１３９６）、河村秀基は斯波氏に屈服してその家臣となり、没落し、支族の多くが斯波氏に随従したといわれている。後に河村氏は大巻館から佐比内城へ拠点を移す。

　なお大巻城の背後に連なる黒石山（２７９．９ｍ）山麓は、かって修験道の聖地として多くの遺跡が存在する。