蓬莱山隠里寺

住所

紫波町片寄字中平

蓬莱山隠里寺　(ほうらいざんいんりじ)（浄土宗）/シラカシ(町指定文化財（天然記念物）)

　隠里寺は、詳しくは蓬莱山西光院隠里寺と称し、本尊阿弥陀如来。本寺は栃木県益子町大沢の名越大本山円通寺で、その末寺になっています。本寺円通寺の「古書人別御改帳」及び「南部叢書」によると、開基は永正４年(1507)と記されており、開山は存蓮社良悦上人覚意和尚といわれています。
　現在、寺に残っている記録としては、元禄２年(1689)以降の過去帳だけです。古老の言い伝えによると、もとは現在地より少し南の小高い山の上にあったということで、今もその辺りの平地に土台石らしいものがあり、それと判断されます。おそらく元禄のはじめ(1688頃)火災に遭い、一切を焼失して現在地に移転建立したものと考えられます。
　現在の本堂は、寛保２年(1742)の建築です。昭和２８年(1953)に本堂の屋根を銅板に葺き替えた際、屋根裏の棟札に「寛保二年建立」と明記してありました。さらに、偶然発見した欄間彫刻の裏側文字は、本堂建立に遅れること５年「延享４年(1747)十二月吉日大工弘前の住人島田弘顕謹作」とあり、永年の歳月をしのばせています。
　境内に薬師如来を祀っていますが、これも古老の話によると相当古い仏堂で、本堂が現在地に建立される以前から、裏山の上に祀られてあったといわれます。昭和３８年(1963)、この堂の屋根修復にあたって仏像を本堂に移転安置したことがあります。
　その時、はからずも体内の支柱三寸角の四面に、経文と願主の名前らしい文字が見え、貞治５年(1366)と明確に墨書が読み取れました。すでにそのころ、この薬師如来が尊崇されていたことが明らかになりました。このこと隠里寺の開創とどのようにかかわっているかはわかりませんが、興味のあるところです。
　庫裡裏手の一段高いところに青々と繁っているシラカシは、昭和５０年(1975)に紫波町指定文化財（天然記念物）になりました。温帯に生育する常緑高木で、この木は植栽されたものですが、自生の北限を大きく越え岩手県でも最大のものです。

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